GO,LADY! 池渕厚子のイキアタリバッタリ活動記録 快食快便、命の源。考えすぎは短命のもと。今日も元気だ、明日はどうだ。マイペースにイキアタリバッタリ。

ばれたら絶縁されそうです。

彼はこの日、関西のとある地区で行われるフルマラソンに参加していた。
彼の目標は完走。できれば4時間をきることだった。
しかし、順調に走り始めたのもつかの間、まずは脹脛が着地するたびにバキン、バキンと音を立てるようになった。痛みはないが、明らかに変調を訴えている足を気遣いながらも、彼は走った。
そして、第2の変調。

彼の敗因は、下着選びだったという。

ナイロンの体にフィットするボクサーパンツ。
20kmを走った時点で、浮腫んできた足を、その裾が締め付けはじめたのだ。
やばい、とは思ったものの、どうすることもできない。
しかし、締め付けは厳しくなるばかり。
やむを得ず、彼は観客に声をかけた。

「誰か、はさみをもってませんか!?」

持ってるわけねーだろう、と思いつつもダメもとだ。

「お、俺、なぜかもってるわ!」

もっとんのかい!!
おっちゃんが貸してくれたはさみで下着の裾を切り、短いスリットをいれた。
すべてほどけてこないよう、気をつけて切った。
そしてまた走り出す彼。
多少締め付けは軽減されたという。

が、しかし。

またもや、彼を災難が襲う。

下着の裾がまくれ上がり、足の付け根を締め付け始めたのだ。
もろに動脈を締め付ける下着。多少みっともないがしかたがない。彼はハーフパンツの裾から両手を差し入れ、下着の裾を手で広げながら走った。
がしかし、走るたびに締め付けれられる。

そして・・・

彼の両足は攣った。

両足が尋常ではない痛みを訴えている。
もはや4時間をきることはできないかもしれない。
しかし、なんとか完走だけはしたい!!

彼は、トイレに駆け込んだ。

そして、

下 着 を 脱 い だ。

しかし、脱いだ下着を捨てる場所が、ない。
しかたなく、彼はそれを丸めてポケットに突っ込み、コースに戻る。
どこかにごみ箱は・・・
あった。
給水所だ。
彼は給水所のゴミ箱に、どさくさにまぎれてそれをつっこんだ。
後ろで誰かが「あいつ、何捨ててん?!」と言っていたのが聞こえたとか聞こえなかったとか。もはや彼にとってそんなことは問題ではないのだ。
ただ、走る。
走る。
原因は解消されたとはいえ、攣ったあとの足は痛い。
痛みをこらえながらひたすら走る。
しかし、痛い。
なんとか紛らわすことはできないのか。
コースにはランナーのためにいろいろな食べ物も用意されていた。
彼は食った。
痛みを紛らわすため、味覚に神経を集中させる。
ひたすら走る。そしてひたすら食う。食いまくる。
そして走る。

そしてついに、彼はゴールした。

ノーパンゴール。


男は、痛む足を引きずって帰路についた。



帰ってきた弟は言った。

「ねーちゃん、明日一日、俺の介護してくれへん?」

姉は言った。

「いやじゃ。」


注>今日の記事は事実の伝聞をもとに構成されたフィクションです。
by Uchieshi_Yae | 2006-03-08 01:54